商の微分を使わずに解く〔1995 旭川医科大〕

$a$は正の定数とする。方程式
  $x+\sqrt{x^2-1}=ax^2$
の異なる実数解の個数を求めよ。

〔1995 旭川医科大〕

この問題の一般的な解き方は、定数分離の考え方で
  \(\displaystyle{a= \frac{x+\sqrt{x^2-1}}{x^2}}\)
とし、関数 \(\displaystyle{f(x)= \frac{x+\sqrt{x^2-1}}{x^2}}\) についての増減を考えることにより、
2つのグラフ $y=f(x)$ と $y=a$ の交点の個数を、$a$ の値によって場合分けします。

ただ、$f(x)$を一階微分したとき、商の微分の公式を使う必要があります。
これは数Ⅲの内容であるため、文系で習う数学の範囲外となってしまいます。

タイトルのように、商の微分を使わずに解くためには、与えられた式の特徴に着目します。
  \(\displaystyle{a= \frac{x+\sqrt{x^2-1}}{x^2}}\)
これは、2次方程式の解の公式
  \(\displaystyle{x= \frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}}\)
に似ていますよね。

では早速、商の微分を使わずに解く方法を見ていきましょう。

商の微分を使わない解き方

\(\displaystyle{a\ \ \left(= \frac{x+\sqrt{x^2-1}}{x^2}\right)}\) は実数であるから、$x^2-1\geqq0$
つまり、$x\leqq -1、x\geqq 1$

ここで、$x\geqq 1$ のとき、$x+\sqrt{x^2-1}>0$
$|x|>\sqrt{x^2-1}$ であるから、$ -1\leqq x $ のとき、$ x+\sqrt{x^2-1} <0$

$a>0$ であるから、 $x\leqq -1 $ は不適であり、$x$ のとりうる値の範囲は $x\geqq 1$ である。

$x$ を固定し、$t$ についての2次方程式 $x^4t^2-2x^3t+1=0$ を考える。
この方程式の解を $\alpha$、$\beta$(ただし、$\alpha\leqq\beta$)とするとき、2次方程式の解の公式より、
  \(\displaystyle{\beta = \frac{x+\sqrt{x^2-1}}{x^2}}\)
であるから、$a=\beta$ である。

\(\displaystyle{f(t)=\frac12x^2t^2-xt+\frac{1}{2x^2}=0}\) とすると、放物線 $y=f(t)$ の頂点の $t$ 座標は \(\displaystyle{\frac{1}{x}}\) であるから、
   \(\displaystyle{ \alpha\leqq\frac{1}{x}}\)、 \(\displaystyle{\beta\geqq\frac{1}{x}}\)

\(\displaystyle{\beta\geqq\frac{1}{x}}\) より、 \(\displaystyle{x\geqq\frac{1}{a}}\)

次に、$t$ を固定し、$x$ についての4次方程式 $t^2x^4-2tx^3+1=0$ を考える。
$g(x)= t^2x^4-2tx^3+1 $ とすると、求めるものは、
  $\boldsymbol{g(x)=0}$ $\boldsymbol{x\geqq 1}$ かつ \(\displaystyle{ \boldsymbol{ x\geqq\frac{1}{t}}}\) を満たす実数解の個数
に等しい。

$\begin{align}g'(x)&=4t^2x^3-6tx^2\\ &=2tx^2(2tx-3)\end{align}$
$x\geqq 1$ であるから、$g'(x)=0$となるのは \(\displaystyle{x=\frac{3}{2t}}\) のときである。

よって、増減表は以下の通りである。
$\begin{array}{c|c|c|c}
x & 1 & \cdots & \displaystyle{\frac{3}{2t}} & \cdots \\ \hline
g’(x) & – & – & 0 & + \\ \hline
g(x) & (2t-1)^2 & \searrow & \displaystyle{1-\frac{27}{16t^2}} & \nearrow \end{array}$

また、\(\displaystyle{\lim_{x\to\infty} g(x)= \lim_{x\to\infty} \{tx^3(tx-2)+1\} = \infty}\)

$g(1)\geqq 0$ であるから、$g(x)=0$ の実数解が存在するときは、必ず1以上である。
$g(x)=0$ が \(\displaystyle{ x\geqq\frac{1}{t}}\) を満たす実数解を少なくとも1つもつためには
  $g\left( \displaystyle{\frac{3}{2t}} \right)\leqq 0$
すなわち、$ \displaystyle{1-\frac{27}{16t^2}} \leqq 0$
よって、$t\leqq \displaystyle{\frac{3\sqrt{3}}{4}} $

ゆえに、 $g(x)=0$ が \(\displaystyle{ x\geqq\frac{1}{t}}\) を満たす実数解を2つもつためには
  $ t<\displaystyle{\frac{3\sqrt{3}}{4}} $ かつ $g\left( \displaystyle{\frac{1}{t}} \right)\geqq 0$
すなわち、$1\leqq t<\displaystyle{\frac{3\sqrt{3}}{4}} $

さらに、$g(x)=0$ が \(\displaystyle{ x\geqq\frac{1}{t}}\) を満たす実数解をただ1つもつためには
  $ t<\displaystyle{\frac{3\sqrt{3}}{4}} $ かつ $g\left( \displaystyle{\frac{1}{t}} \right)< 0$ または $t= \displaystyle{\frac{3\sqrt{3}}{4}} $
すなわち、$0<t< 1 $、$t= \displaystyle{\frac{3\sqrt{3}}{4}} $

したがって、方程式$ x+\sqrt{x^2-1}=ax^2 $ の異なる実数解の個数は
  $\left.\begin{array}{l}\boldsymbol{0<a<1、a= \displaystyle{\frac{3\sqrt{3}}{4}} のとき、1個}\\ \boldsymbol{1\leqq a<\displaystyle{\frac{3\sqrt{3}}{4}} のとき、2個} \end{array}\right\} ……(答)$

グラフで視覚的に捉えると…

さきほどの解き方では必要な公式は減るものの、かなりテクニカルで一般の方にとっては難しい内容になってしまいました。

では、商の微分を使う一般的な解き方と、さきほどのように4次関数に帰着して解いた場合では、視覚的にはどのように異なるか見てみましょう。

まず、真面目に商の微分を使ったときには、最終的にどのようなグラフにたどり着くかについてです。
\(\displaystyle{y= \frac{x+\sqrt{x^2-1}}{x^2}}\) と $y=a$ のグラフの交点の個数を、$a$ の値で場合分けすることになります。
(スライダーで、$a$ の値を変化させることができます。場所によって交点Aの表示がされないことがありますが、それはソフトウェアの問題です。)

次に、与えられた関数を工夫して、4次関数に帰着した場合はどうなるか、見てみましょう。
$y= t^2x^4-2tx^3+1$ と $x$ 軸 のグラフの交点のうち、\(\displaystyle{x\geqq\frac{1}{t}}\) を満たすものの個数を、$t$ の値で場合分けすることになります。

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